就職先、病院か薬局か迷うなぁ。
薬学生の皆さん。
6年生薬学部では病院・薬局での実務実習が必須になっていますね。
しかし、2.5ヶ月の実習期間で、病院薬剤師の実際のやりがいまで理解するのは難しかったでしょう。
私は大学卒業後、都内の急性期病院で6年間勤務。
今後別の病院へ転職しますが、転職先も病院を選んでいます。
そんな私が、病院で働いてよかった!と感じたことや病院薬剤師として働くメリットをお伝えします。
この記事は、こんな人にオススメ!
- 就職先を病院か薬局で迷っている。
- 病院薬剤師の実態を知り、就活に生かしたい。
- 病院で働くために、どんなことが求められるか知りたい。
病院薬剤師の魅力はこの3つ!
まず結論からお伝えします。
病院薬剤師として働いて、私が魅力だと感じたことは3つあります。
1.多職種と協力したチーム医療に参加するチャンスがある
2.患者情報を得やすく、医師への処方提案がしやすい
3.資格・認定取得や学会発表へ意欲的な薬剤師が多く、刺激を受けられる
色々なことにチャレンジできそう!
多職種と協力したチーム医療に参加するチャンスがある
病院ではチーム医療としての活動が盛んです。
専門性を生かした分野で、医師・看護師・薬剤師・栄養士・作業療法士等が共同し、患者さんの治療に貢献できるように取り組んでいます。
日本学術会議薬学委員会でも、以下のように提言がされています。
専門薬剤師は、チーム医療において医師の負担を分散し安全で安心できる薬物療法を提供するために、薬物療法に関して身に付けた高度な知識・技能を活用し、薬物療法の安全性と有効性の確保に責任をもって行動しなければならない。
日本学術会議薬学委員会 専門薬剤師分科会 ー専門薬剤師の必要性と今後の発展-医療の質の向上を支えるために-より引用
例えば、NST、PCT、ASTといったようなチーム医療の名前を聞いたことがあるでしょう。
- 栄養サポートチーム(NST:Nutrition Support Team)
- 緩和ケアチーム(PCT:Palliative Care Team)
- 抗菌薬適正使用支援チーム(AST:Antimicrobial Stewardship Team)
私は、PCTやASTへ所属していた経験があります!
現在は、ほとんどの病院でチーム医療の活動が行われています。
チーム医療の活動においては、
薬剤師は薬学的知識の提供、患者アセスメント、処方提案などの介入が求められます。
知識習得のために、自己研鑽として専門分野の学習の努力が必要とされます。
いっぽうで、専門的知識の提供や多職種との意見交換による”やりがい”も感じられることでしょう。
患者情報を得やすく、医師への処方提案がしやすい
病院で仕事をする職種は、電子カルテで情報共有を行っています。
病院薬剤師は、担当する患者さんに関して、電子カルテから患者情報を得ることができます。
- 治療方針
- 検査値(腎機能、肝機能、血算)
- かかりつけ医からの診療情報提供書
- 看護記録など、多職種からの情報
ここまで詳細な情報が得られるのは、病院ならではのメリットだね!
患者情報をもとにした薬学的介入につながる
得られた情報をもとに病院薬剤師としての処方鑑査や処方提案につなげていきます。
例えば、薬剤によっては腎機能・肝機能によって用量調節が必要なものがあります。
検査値を確認し、その患者さんにとって適切な投与量であるかどうか確認するのも、薬剤師の仕事のひとつ。
他にも、併存疾患により禁忌となる薬剤(例:糖尿病と抗精神病薬)を確認する際にも、情報を得やすいという利点があります。
具体的な検査値をもとに処方提案をすることで、
より根拠に基づいた介入となり、医師から受け入れられる確率も高くなるでしょう。
資格・認定取得や学会発表へ意欲的な薬剤師が多く、刺激を受けられる
資格・認定
専門的な資格・認定取得のしやすさでいえば、薬局よりも病院に軍配が上がります。
病院によっては、所属する薬剤師の資格取得状況(種類や人数)を薬剤部のホームページに掲載している施設があるので、チェックしてみましょう。
資格をとる際に、一番手っ取り早い方法は、自分のとりたい資格をもっている先輩に取得方法やコツを聞くことだよ。
認定取得の申請をする場合には、「症例報告を○例提出」という場合が多いです。
その際にも、専門分野に精通した薬剤師に添削を依頼し、資格試験合格の可能性をあげることができます。
自分の取りたい資格をもっている薬剤師の所属している病院に応募するのはオススメ!
学会発表・論文投稿
病院の特性によって、学術的な活動を業績として評価する場合があります。
とくに大学病院や特定機能病院ではその傾向があるでしょう。
学生時代に学会発表の経験がなかった人でも、社会人になってはじめて研究を行い、学会発表することは可能です。
私も、学生時代には、学会発表の経験はありませんでした。
しかし、薬剤師として働き始めた職場では、学会発表経験のある薬剤師が多く所属していたこともあり、研究活動の”いろは”を働きながら習得することができました。
病院薬剤師に求められる能力は、コミュニケーション能力・体力・向上心
コミュニケーション能力
病院での薬剤師の活動場所は、薬剤部(調剤室)にとどまりません。
病棟担当薬剤師になった場合には、病棟の看護師との情報共有。
外来で服薬指導をする際にも、医師や外来看護師との円滑なコミュニケーションが必要とされます。
コミュ力に自信がない私はどうしたらいいの?
コミュニケーションにあまり自信がないという方も、「あいさつ」「笑顔」「お礼」といったような基本的な社会人マナーを身につけていれば、問題ないことがほとんどです。
体力
病院薬剤師と薬局薬剤師の大きな違いは、夜勤(当直)の有無です。
夜勤といっても、施設によって忙しさは異なります。
特に、いわゆる三次救急と呼ばれる救急救命センターのある病院の場合には、24時間重症患者を受け入れています。
夜間の緊急入院、緊急オペは間違いなくあるため、夜勤担当の薬剤師もゆっくり睡眠をとることができないでしょう。
夜勤をすることで、昼夜のリズムが崩れるため、慣れるまではつらい思いをするかもしれません。
ちなみに、病院によっては、夜勤のない病院(慢性期病院)もあるため、「夜勤があるから無理」と病院薬剤師をあきらめることは、もったいないです。
自分にあった働き方を探していきましょう!
向上心
病院薬剤師は、薬局・企業・公的機関で働く中でも、もっとも給料が低いと言われます。
そうはいっても、続けていく人がいるのは、
「チーム医療の一員として活躍したい」
「学会発表・論文投稿をしてエビデンスをつくっていきたい」
という志があるからでしょう。
夜勤もあり、体力的に苦しいこともありますが、病院薬剤師としてのやりがいや目標を持ちながら働くことで、仕事を続けるモチベーションとなります。
私が病院薬剤師を目指した理由は、病院でしか学べない知識・スキルを得たかったから
私が薬学生の時に、なぜ病院薬剤師を最初の就職先に選んだのかお伝えします。
私は、仕事が大変でも、若手のうちに病院でしか学べないことを学び、将来的な薬剤師としての歩みの糧にしたいと考えました。
病院でしか学べない知識とは
薬局と病院での薬剤師業務は、基本的な調剤業務は同じです。
とはいえ、やはりそれぞれのフィールドでないと経験できない業務があります。
- 注射薬調剤
- 抗がん剤の無菌調製
- 治験薬の調剤
- TDM(治療薬物モニタリング:バンコマイシン、テイコプラニンなどの投与設計)
- チーム医療での活動
- 病棟薬剤業務
これらの病院で培った知識・経験があることで、今後薬局や他の分野で働く際ことになった際にも、知識を生かせる!と感じています。
実際に得られたスキル・資格など
私が実際に得た資格内容や、スキルについて紹介します。
資格
病院薬剤師6年間で2つの資格を取得しました。
- 病院薬学認定薬剤師
- HIV感染症薬物療法認定薬剤師
病院薬学認定薬剤師の資格は、各専門資格の土台となるものです。私の職場では、多くの先輩がこの資格を取得していたのです。そのため、資格を取得するための単位集めや試験対策についてアドバイスを受けることができました。
HIV感染症薬物療法認定薬剤師に関しては、所属していた施設が専門的な施設であったこと。業務上、症例に関わる機会が多く、自然と知識が身についていきました。
資格取得には、周りの環境(指導してくれる先輩の存在)や、症例数の確保が必要です!
学会発表
研究活動に関しては、下記の通り経験しました。
- 口頭発表1回
- ポスター発表2回
いずれも業務後に研究をしたためかなり時間を要しましたが、研究を形にして、世に発表できたことは、とても達成感のあることでした。
学会発表をするために、地方へ出張するのも楽しみの一つでした!
病院薬剤師に向いているのは「幅広い業務経験」「チーム医療への参加」を希望する人
病院は「幅広い業務経験を得たい」「チーム医療へ参加したい」という希望がある薬剤師には、マッチする職場です。
薬剤師として幅広い業務を経験したい人
現在の病院薬剤師の活動フィールドは、かなり幅広いです。
- 調剤・注射室業務
- 医薬品情報管理業務
- 無菌調製業務
- 病棟薬剤業務
- 外来服薬指導業務
- 入退院支援業務
- 手術室業務
- チーム医療への参加
病院薬剤師って、いろんな場所で活動しているんだね!
経験を積むと、いくつかの仕事を兼任することもあるでしょう。
1日のうち、一つの仕事のみに従事するのではなく、様々な業務を行いたい人には向いています。
注意点として、マルチタスクが求められるため、「タイムマネジメント能力」や「仕事を正確に素早く終わらせるスキル」を身につけないと、残業が発生してしまう恐れがあります。
チーム医療に関わりたい人
私も、これまで緩和ケアチーム、抗菌薬適正使用支援チーム、摂食嚥下支援チーム、専任病棟の診療科担当など、様々なチーム医療を経験しました。
医師や看護師から「薬剤師がいてくれてよかった!」と言われることはとても嬉しい経験でした。
専門性をもってチーム医療に携わりたい人は、病院薬剤師をおすすめします。
もちろん、薬局においても、在宅医療でチーム医療に関わることができるので、病院だけをおすすめしているわけではありません。
自分に合う病院の探し方
さて、働きたい病院を探そう!と思っても、世の中にはたくさんの病院がありますね。ここでは、働きたい病院を選ぶためのポイントを3つ紹介します。
急性期・回復期・慢性期どこで働きたいか考える
私は急性期の病院で新卒の頃から働いていました。
しかし、世の中には各地域に異なる役割をもった病院があります。
薬剤師の人数、病院の特性によって、薬剤師の役割や働き方もかなり変わってきます。
就職活動の際には、できる限り病院見学を行い、自分に一番しっくりくる施設を見つけましょう。
専門的に得たい知識があれば「専門病院」、総合的な知識が必要なら「総合病院」を選ぶ
例えば、がんの知識を徹底的に習得したいのであれば、がんを強みとしている病院で働くのが良いでしょう。
それに対して、総合的な薬学の知識を幅広く得たいのであれば、複数の診療科がある総合病院で働くと知識がつきます。
勤務している先輩の話を聞く
実際の病院薬剤師の働き方や薬剤部の雰囲気は、その場で働いている薬剤師に聞くのが一番良い!
学生の場合は、自分の大学から就職した先輩がいれば、就職課から紹介してもらうといったような方法がとれるでしょう。
使えるツテはすべて使って、情報を得ていこう!
まとめ 病院薬剤師は最初の就職先におすすめ
私は薬剤師の第一歩として、病院という就職先を選んで良かったと思っています。
✅注射薬を含む総合的な薬学の知識の習得。
✅チーム医療に携わり多職種と協力する楽しさ。
✅研究活動に励む。
こういった経験は、病院薬剤師ならではの魅力であり、今後の薬剤師としての活動の指針になると思っています。
コメント